相続税対策の基本
2021/09/15
相続対策の基本
相続対策、特に今回は相続税の負担を軽減するために取りうる基本的な手法について説明したいと思います。
まず、相続税対策は一朝一夕でできるものではあります。長期間にわたって対策を講じていくことこそが一番の対策になるということをご相談者にはいつもお伝えしております。
いきなり漠然と「相続対策を教えてほしい!」との相談を受けることが時々ございますが、まずは財産の構成や推定相続人の状況等を把握し、概算でも良いので予想される大まかな相続税額の算出をお勧めします。
その後、算出した概算相続税額を基にご要望をお聞きしながら対策を練っていくという流れになります。
相続税対策としてまず最初に考えられることは「暦年贈与」ですね。暦年贈与とは毎年1月1日から12月31日の間に贈与を行うことですが、贈与税の場合年間で110万円の基礎控除がありますので、110万円以内の贈与であれば無税で資産の移転を
行うことが可能です。無税で資産の移転を図る場合、1年間で移転できる金額は少ないですが長期間にわたって継続的に行うことができれば非常に効果的な方法です。
仮に相続人3名に非課税の範囲内で10年間贈与を行った場合、110万円×3名×10年間=3,300万円の資産が移転できます。
また贈与税の非課税範囲内に拘らずに贈与税率10%の範囲内での贈与を同様に行うと310万円×3名×10年間=9,300万円の資産が生前に移転できることになります。
もちろんこの場合は贈与税をいくらか支払必要が生じますが、相続税は累進税率になっていますので相続財産が多くなるにつれて税負担は増します。仮に相続税対策前の実質の相続税率が30%だったとすると贈与税を少し支払ってでも生前に資産を移転した方が贈与税+相続税のトータルの税額が低く抑えられる場合があります。
つまり、相続開始時までに暦年贈与を行う年数が長ければ長い方が対策としては大変有効となります。
ですので、相続対策は少しでも早くから着手することが大切です。
他にも相続税対策としては小規模宅地等の特例が適用できれば相続税軽減効果は大きくなります。
例えは相続対策として手持ちのキャッシュ1億円で賃貸用不動産を購入し不動産賃貸業を始めるとします。その場合、土地は路線価での評価、建物は固定資産税評価額での評価となり、一般的にはキャッシュでそのまま持っているよりも
相続税評価額は下がります。
また賃貸用建物とその敷地の場合は建物については貸家評価としてさらに最大30%の評価減、土地は地域にもよりますが貸家建付地評価として最大21%の評価減を受けることができます。
さらに被相続人が相続開始時までその不動産賃貸業を行っており、かつ、その賃貸用不動産を相続した相続人がその不動産賃貸業を申告期限まで引き続き継続して行った場合に、その土地について200㎡まで50%の評価減を受けることができます。
これを「小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)」と言います。
ただし、相続開始直前に不動産賃貸業を始めて小規模宅地等の特例を適用しようとする人が少なからずいたため、平成30年度税制改正によって「相続開始前3年以内に不動産賃貸業を始めた土地」については小規模宅地等の特例の対象外とされました。
つまり、このケースにおいても上記の暦年贈与同様、早くから対策を進めることが大切です。
他にも基本的な相続対策として生命保険金の非課税枠の活用等もありますが、認知症等によって判断能力が低下してからでは契約ができなくなることもあります。
認知症になってしまうと基本的には相続対策は出来なくなってしまいますのでそのような点からも早めの対策が必要です。