中小企業のための金融行政方針
2024/01/14
中小企業が発展するための金融機関との付き合い方
経営者保証ガイドライン
今回は金融庁が発表している金融行政方針に記載がある「経営者保証ガイドライン」を説明するとともに、今後中小企業が金融機関とお付き合いしていく中で押さえていただきたいポイントを解説します。
金融庁は、金融機関が中小企業に融資をするときには「担保主義ではなく、その事業の将来性や、経営者が信頼できる人物かを判断したうえで融資をすべき」と言っています。
これは、「事業性評価による融資」ということですが、金融機関が「目利き力」を上げていくことが長期的に見ても金融機関の経営基盤を強化する最も重要なポイントと位置付けられています。
そういった金融庁の方針の影響か、最近では金融機関の対応が以前よりも柔軟になってきたという印象を受けます。
しかし、一方では金融機関が本当に中小企業の「事業性」をみて融資してくれているのかわからないと感じる部分もあります。
「経営者保証」の面についても「簡単には経営者保証を外してもらえない」といった声もお聞きします。
経営者保証の問題は事業承継の問題にも深く関係します。
後継者はいるが事業承継をするためには後継者が多額の経営者保証をしなければならないことが多く、事業承継に二の足を踏む後継者候補が少なくありません。
これは親族内承継、親族外承継問わず問題となっています。
経営者保証が付いていると、仮に会社が倒産し、返済不能となった場合には保証人である経営者個人が返済していかなくてはなりません。
さらに、経営者が亡くなり、後継者がいない場合には会社を閉めることになりますが、個人保証が付いていると保証人である亡き経営者の相続人(配偶者、子どもなど)が保証債務を引き継がなければならないこととなります。
このように個人保証によって、経営者が再起を図ることが難しかったり、残された遺族の生活がひっ迫するなど深刻な問題を引き起こすこととなります。
では、経営者保証を外し、円滑な事業承継を進めるにはどうしたら良いのでしょうか??
それはまず、「経営者保証ガイドラインの3要件」を満たす企業を目指すことです。
❶資産の所有やお金のやりとりに関して、法人と経営者個人が明確に区分・分離されていること
❷財務基盤が強化されており、法人のみの資産や収益力で借入金の返済が可能であること
❸金融機関に対して、適時適切に財務諸表が開示されていること
この上記3要件を満たすと、事業者は経営者保証なしで融資を受けられる可能性が出てきます。
また、すでに提供している経営者保証を見直すことができる可能性があります。
❶については、プライベートの飲食費用などを経費にしない。身内間の不動産賃貸借、借入金などについては世間相場程度の適正な賃料、利息のやりとりをするなど、当たり前のことを言っているだけです。
❷については経営改善をして利益を出しましょう!ということです。
いくら金融庁の金融行政方針でガイドラインが制定されたとしても、返済余力が十分でない会社に対して経営者保証を外すなど金融機関としては難しいのは当然でしょう。
とにかく収益の最大化、経費の最小化を目指し、会社をブラッシュアップしていき、後継者が事業承継したくなるような会社にしていけば、おのずと経営者保証を外すことができるようになるでしょう!
❸については、中小企業自らが日々会計帳簿を作成し業績管理を行い、金融機関に対して毎月試算表を提出するなどタイムリーな情報開示を行い、金融機関との情報の非対称性の解消を図ることです。
事業者を取り巻く環境は一層厳しくなっており、難しいかじ取りを強いられています。
どんぶり勘定、どんぶり経営でも何となく経営が上手くいっていた時代はとうに終わっています。
中小企業が金融機関と上手くつきあっていくためには中小企業経営者は金融庁の方針などの情報をキャッチし、いま、行政や金融機関など社会から何を求められているか理解をしておく必要があります。