適格請求書等保存方式(インボイス方式)~登録事業者になるか免税事業者のままでいるか~
2021/09/20
適格請求書等保存方式(インボイス方式)
~登録事業者(課税事業者)を選択するべきか、免税事業者のままでいるべきか~
令和5年10月1日から適格請求書等保存方式(以下、「インボイス方式」)が導入されるに当たって、免税事業者は適格請求書発行事業者(課税事業者)を選択するか、又は、そのまま免税事業者を選択するか判断に迫られます。
事業者が納付すべき消費税は原則、売上の際に預かった消費税から仕入・経費・固定資産の取得等(以下、「仕入れ等」)の際に支払った消費税を控除して計算します。
インボイス方式が導入されると、この仕入等に係る消費税について適格請求書発行事業者以外の事業者に支払った消費税については控除できなくなります。
例)ケース(1)
①売上高 1,100円(うち、消費税100円)
②仕入高(インボイス発行事業者からのみ )880円(うち、消費税 80円)
③納付税額 100円 - 80円 = 20円
ケース(2)
- ①売上高 1,100円(うち、消費税100円)
- ②仕入高(インボイス発行事業者から) 550円(うち、消費税 50円)
- ③仕入高(インボイス発行事業者以外から) 330円(うち、消費税 30円)
- ④納付税額 100円 - 50円 = 50円
つまり、ケース(2)の場合、支払っている消費税は同じであっても納付税額が大きくなります。
ではこの場合、実務上どのような影響が考えられるでしょうか??
想定される影響は3つ考えられます。
(1)仕入業者から消費税分の値引きを求められる
(2)取引が断られてしまう(仕入先を適格請求書発行事業者へ変更されてしまう)
(3)適格請求書発行事業者(課税事業者)になるように迫られる
取引先が大企業の場合には(2)のケースも考えられますが、中小企業が取引先の場合は
急に取引先を変更することが難しいケースも多いと思いますので(1)のケースが多くなると思われます。
免税事業者のほとんどは個人事業者や零細企業ですので仮に(2)のケースが起こると死活問題です。(1)のケースでも実質値引きですので業績及び資金繰りに与える影響は少なくないと思われます。
では、適格請求書発行事業者(課税事業者)になるのが良いのでしょうか??
答えは事業内容によってケースバイケースです。
ただし、一つの判断基準として次のように考えることができます。
□ 主に一般消費者向け販売、サービス中心(B to C)
取引の相手先が消費税の納税義務者でない場合が多く、今後の取引に影響が少ないと考えられるため、そのまま免税事業者を選択する。
□ 主に卸売業などの事業者間取引中心(B to B)
取引の相手先が消費税の納税義務者である場合が多く今後の取引に影響が考えられるため適格請求書発行事業者(課税事業者)の登録を検討する。
※今回は適格請求書保存方式(インボイス方式)の導入に伴う免税事業者に与える影響について説明しましたが、次回は免税事業者が採るべき方法(簡易課税制度の選択の検討など)とその有利・不利について詳しく説明します。