適格請求書等発行方式(インボイス方式)の開始の伴う課税事業者の選択の検討
2021/09/22
適格請求書等保存方式(インボイス方式)の開始に伴う課税事業者の選択の検討について
~課税事業者及び簡易課税制度の選択について~
適格請求書等保存方式(インボイス方式)が導入されると消費税の免税事業者は今まで消費税込みで請求していたものが消費税を除いた金額で請求しなければならないケースが出てくると思われます。
もちろん、今まで消費税の免税事業者であったのに消費税込みで請求していたこと自体がおかしいのでこれが本来あるべき姿だと考えることもできます。
今までは免税事業者が消費税込みで請求した場合、納付する必要がない消費税相当額については免税事業者の利益となっていました。このことを「益税」と言います。
ところが、適格請求書等保存方式が導入され、免税事業者が今までのように消費税分を請求できなくなると、益税部分が無くなり、業績と資金繰りに与える影響が大きいかも知れません。
では、その影響を少しでも少なくするためにはどうしたら良いか??
一つご検討いただきたいことは適格請求発行事業者(課税事業者)を選択することです。
単純に考えると課税事業者になると消費税を請求することできるが、その消費税はそのまま税務署に支払うことになり、結局のところ、免税事業者のままでも課税事業者を選択しても同じになるように思われますが、事業者が納付する消費税は原則、売上に係る消費税から仕入・諸経費の支払に係る消費税を控除して計算します。
つまり課税事業者を選択したとしても預かった売上に係る消費税の全額を税務署に納付するわけではありません。
免税事業者のままでいる場合と適格請求書発行事業者となって課税事業者を選択する場合でどちらが有利になるか簡単な事例で説明いたします。
免税事業者 課税事業者
- 売上高 100,000円 110,000円
- 仕入高 33,000円 33,000円
- 諸経費 22,000円 22,000円
- 消費税納付額 0円 5,000円
- 利益 ①-②-③-④ 45,000円 50,000円
ご覧のとおり、このケースでは課税事業者を選択する方が最終的な利益は多くなります。
つまり、課税事業者を選択することが必ずしも損になるとは限りません。
さらに、この事例は原則課税方式を前提としておりますが、例えばこの事業者が卸売業者である場合、簡易課税を選択すればさらに有利になります。
先ほどと同じケースで原則方式の場合と簡易課税を選択した場合の利益の比較をすると以下のようになります。
原則課税 簡易課税(みなし仕入れ率90%)
- 売上高 110,000円 110,000円
- 仕入高 33,000円 33,000円
- 諸経費 22,000円 22,000円
- 消費税納付額 5,000円 1,000円
- 利益 ①-②-③-④ 50,000円 54,000円
卸売業のみなし仕入れ率は90%であるため、実際には預かった消費税10,000円のう
実際には1,000円しか支払わなくて良いことになります。
今まで免税事業者であった事業者であれば通常は簡易課税を選択することができますのでさらに有利になります。
もちろん、今回のケースでは課税事業者となって簡易課税制度を選択することが一番有利となりましたが、実際にどれを選択すると有利になるかは事業者ごとに異なります。
適格請求書等保存方式(インボイス方式)が導入されるまで丁度あと2年です。
まだまだ時間があるように思われるかも知れませんが事業に大きな影響を与える可能性があるため早い目にしっかりとシミュレーションを行うなど検討をすることが重要です。