中小企業の財務分析
2021/11/08
中小企業の財務分析
企業の経営分析を行う際に「財務分析」によって自社の過去との比較、または、同業他社との比較
を行います。
財務分析の指標は様々ありますが、実務上特に金融機関等が注視する指標について紹介します。
(1)自己資本比率
総資本のうち、自己資本がどの程度の割合を占めるかを示す指標です。
自己資本比率が高いほど経営が安定しているといえます。
自己資本比率 = 自己資本/総資本×100(%)
(2)売掛債権回転期間
売上債権(受取手形・売掛金など)を回収するまでにかかる期間のことで、売上債権回転期間が短いほど売上債権が短期間で
回収することができ、資金繰りが楽になります。
同業他社比又は自社の過年度と比較して乖離がある場合、不良債権の有無などを確認し、回収努力をする必要があります。
なお、税法上、貸倒損失の計上時期によっては損金不算入となる場合がありますので
不良債権については管理をきちんと行い、回収不能が確実であれば貸倒処理をしましょう。
売上債権回転期間(日) = 売上債権/売上高÷365日
(3)買入債務回転期間
買入債務(支払手形・買掛金など)をどのくらいの期間で支払っているかを示す指標です。
買入債務回転期間は長期化した方が「運転資金の調達が必要となる期間」の短縮につながります。
ただし、回転期間の長期化を推し進めすぎると取引先に信用不安を疑われる恐れがありますので注意が必要です。
買入債務回転期間(日) = 買入債務/売上高÷365日
(4)棚卸資産回転期間
売上高に対する棚卸資産の割合をいい、棚卸資産がどのくらいの期間で販売されたかを示す指標です。
棚卸資産回転期間が長いほど在庫の現金化に時間を要するため、あまり多いと資金繰りにマイナスの影響を与えます。
不良在庫があれば損切してでも早急に現金化をする必要があります。
棚卸資産回転期間(日) = 棚卸資産/売上高÷365日
(5)債務償還年数
有利子負債を何年で返済することができるかを示す指標です。
この年数が短いほど返済能力が高く、金融機関等への信用は高くなります。
算式はいくつかありますが、ここでは以下の算式を紹介します。
債務償還年数(年) = (有利子負債-(※)運転資金)/(税引後利益+減価償却費)
金融機関が目安とする債務償還年数は10年以内です。
(※)なお、運転資金は次のように算出します。
売掛債権+棚卸資産―買入債務
分子の運転資金は入金と支払のタイムラグを補うための資金です。
売掛債権回転期間が借入債務回転期間よりも長い場合には売上代金の入金前に支払が必要となり、また、
仕入れた商品が販売されるまでは現金が商品に姿を変えていますので、その期間の差引が「必要運転資金」と
いうことになります。
運転資金は通常、短期借入金で調達するため、債務償還年数の計算の有利子負債には含めません。
分母の算式は税引後利益に資金流出を伴わない減価償却費を加算した簡易キャッシュフローを
使用します。