中小企業のM&A
2021/10/11
中小企業のM&A
~自社の永続的発展・地域社会への貢献~
少子高齢化、経営者の高齢化が進んでいます。一方で親族内に後継者がおらず、後継者不在のため廃業を選択する中小企業が増えています。
日本企業の99%が中小零細企業であり、全従業員の約70%が中小零細企業に勤務されています。
今後、後継者不在によって廃業する中小企業が増えてくると優れた技術の承継や雇用の維持ができなくなり、日本経済が縮小してしまうことになります。
親族内承継の減少によって、従業員や第三者に対する親族外承継が増加しており、事業承継の在り方も変化しています。
親族内承継、親族外承継(M&A)に関わらず事業承継には時間がかかるため早期の取組が必要です。
創業者である社長にとって、自分が長年にわたって手塩にかけて育てて生きた会社を第三者へ譲渡することを決断することは並大抵ではないと思います。可能であればずっと自分が社長を続けていきたいと思われる気持ちはよくわかります。
しかしながら人間寿命がありますのでどのような形であれ、いつかは事業を承継しなくてはなりません。
事業承継でお悩みの経営者の方はぜひ早めに顧問税理士等へご相談ください。
また事業承継をサポートするために全国47都道府県に「事業承継・引継ぎ支援センター」が設置されています。
なお、相談は無料であり、各専門家とも連携してますので、まずはご相談されることをお勧めします。
さて、M&Aとは『Mergers(合併)and Acqusitions(買収)』の略です。M&Aというと大企業同士の話と思われるかも知れませんが、最近では中小企業間でもM&Aが盛んです。
大手のM&A仲介会社や銀行が扱う案件は年商数十億から数百億円程度の中規模M&Aが中心ですが、「事業承継・引継ぎ支援センター」に相談される案件では年商1億円以下の法人や個人事業者がほとんどだそうです。
小規模M&Aの手法は主に「株式譲渡」または「事業譲渡」の2パターンです。
(1)株式譲渡によるM&A
株式譲渡では買収企業又はその企業の代表者個人が譲渡企業の株式を取得します。
譲渡企業の株主は株式売却額と購入価額(オーナー企業の場合は設立時の出資額)との差額(売却益)について20.315%の所得税・住民税が課税されます。
株式譲渡の場合の特徴として、買収企業が譲渡企業の株主から株式を買取り、子会社化するケースほとんどです。
<株式譲渡のメリット>
株式の売買だけのため法的手続きが比較的簡単
株主が変わるだけのため、雇用契約や対外契約の変更手続きは少なくて済む。
<株式譲渡のデメリット>
簿外債務(決算書の載っていない負債)や過去の紛争を引き継ぐ恐れがある。
(2)事業譲渡によるM&A
事業譲渡は譲渡企業の事業の一部を買収企業が引き受ける手法です。
一部の事業を切り出すため、資産・負債の切り分けが難しいケースがあります。
なお、個人事業の場合は譲渡する株式が存在しないため、個人事業の事業を譲り受ける場合には事業譲渡によるM&Aになります。
<事業譲渡のメリット>
必要な資産・負債だけを選択承継できるため、簿外債務を引き継ぐリスクが低い。
事業の部分譲渡が可能。
<事業譲渡のデメリット>
譲渡対象資産の移転手続きが煩雑。
従業員の転籍手続、対外的契約(取引契約、賃貸借契約)の変更手続きが必要
許認可が必要な事業で、再取得が必要となる場合にはハードルが高い。
売り手が実際にM&Aを進める場合には経営者が明確なイメージを持って進めていく必要があります。
➊承継の時期(今すぐ、3年後、5年後など)
➋承継先の検討(親族、従業員、外部の第三者)
❸承継方法(株式譲渡or 事業譲渡)
また、明確なイメージがあったとしても以下のような場合には承継に時間がかかるケースがあります。
➊株主が分散している
➋事業用資産(会社の土地など)が個人名義になっている
❸社長貸付金など不透明な資金の流れがある
❹多額の個人保証がある
➊については社歴の長い会社の場合には過去に相続が発生していることがあり、株式が分散してしまっているケースが考えられます。
まずは事前に株式を買い戻して集約させましょう!
➋買収企業が事業用資産の使用に支障をきたさないようにしておきましょう!
❸第三者承継の場合は事前に返済する必要があるため、早めに精算してしまいましょう。
❹経営者保証ガイドラインなどの経営者保証免除要件を満たすように会社をブラッシュアップさせ、経営者保証を外してもらいましょう!
※今回はM&Aの概要の説明でしたが親族内承継・親族外承継ともに早めに準備が必要です。特に親族外への承継の場合には過程で様々な障壁がでてくることが予想されます。
難しい問題ですが事前準備が大切ですので「自社が永続的発展」「地域社会への貢献」という視点でぜひ一度考えてみてください。