非居住者等に対する源泉徴収と租税条約について
2021/10/22
非居住者等に対する源泉徴収と租税条約について
【非居住者に対する源泉徴収】
非居住者又は外国法人(以下、「非居住者等」という)に対して、国内において源泉徴収の対象となる「国内源泉所得」の支払いをする者は、その支払の際、所得税及び復興特別所得税を源泉徴収し、徴収の日の属する月の翌月10日までに国に納付しなければなりません。
国内源泉所得については↓参照
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2878.htm
「国内源泉所得」には様々なものがありますが、実務上は「内国法人から受ける配当金」、「給与・賞与等の人的役務の対価」、「工業所有権等の使用料」、「不動産の譲渡」などをよく見かけます。
源泉徴収税率については以下のとおりです。
・配当金、人的役務の提供、工業所有権等の使用料など・・・・・20.42%
・不動産の譲渡 ・・・・・10.21%
【租税条約の適用による軽減又は免除】
原則は上記のとおりですが、日本と非居住者等の居住地国との間で【租税条約】が締結されている場合には、日本の国内法(所得税法)に優先して租税条約の定めるところにより、税率が免除又は軽減されることがあります。
一例を挙げると以下のとおりです。
<日米租税条約>
・配当(持株割合50%以上、かつ、保有期間6ヶ月以上の場合)⇒免税
・使用料 ⇒免税
<日仏租税条約>
・配当(直接持株割合15%以上又は持株割合25%以上(間接所有を含む)⇒免税
(持株割合10%以上(間接所有を含む)) ⇒5%
・使用料 ⇒免税
なお、租税条約の適用を受けようとする場合には、その支払いを受ける非居住者等が、支払日までに支払者を経由して「租税条約に関する届出書」を支払者の納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。
「租税条約に関する届出書」は配当金の場合は【様式1】、使用料の場合は【様式3】といったように内容によって様式が異なります。
租税条約に関する届出書の様式は↓参照
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/joyaku/mokuji2.htm
【租税条約に特典条項がある場合】
租税条約の適用については条約濫用を防止する措置として「特典条項」が導入されています。
第3国の居住者が支配するペーパーカンパニー等への免税特典を制限するための措置です。
日本が締結している租税条約の多くがこの「特典条項」を設けています。
例えば、日米租税条約の適用を受けようとする米国法人の株主が第3国の居住者であり、その米国法人はトンネル会社で実質的に事業を行っていないと認められる場合などは特典条項に該当せず免税の特典を受けられません。
「特典条項」を満たすケースの一例としては以下のような場合です。
- 外国法人が本店所在地国で上場している。
- 非上場の外国法人がオーナー企業である場合、その株主の居住地国が当該外国法人の本店所在地国と同じである。
【租税条約に関する源泉所得税の還付請求】
その取引が租税条約の適用を受けることができるものであった場合でも、支払日の前日までに「租税条約に関する届出書」を提出していない場合は上述のとおり、国内法(日本の所得税法)に基づく税率により源泉徴収が必要です。
ただし、後日「租税条約に関する届出書」とともに「租税条約に関する源泉徴収税額の還付請求書(様式11)」を提出することで軽減又は免除を受けた場合の源泉徴収税額と国内法の規定によって源泉徴収された税額の差額について還付を請求することができます。
還付金は原則、申請者である「非居住者等」に還付されますが、非居住者等からの委任状とその翻訳文を添付することで、代理人(支払者も含む)が受け取ることもできます。
租税条約に関する源泉徴収税額の還付請求書の様式は↓参照
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2889.htm