ウィズコロナ時代の企業経営と金融機関との付き合い方
2021/11/26
ウィズコロナ時代の企業経営と金融機関との付き合い方
コロナ禍において多くの事業者が業績確保と資金繰りに悩まされておりますが、資金繰りについては給付金及び緊急融資によってひとまず落ち着いておられる事業者も多いかと思われます。
しかし、本当に重要なのはコロナのあとです。借りたお金は必ず返済しなければいけません。既存の借入金に新規借入金が上乗せされ、返済能力を超える借入金残高に陥っている中小企業もございます。
今回は緊急事態であったため、かなり融資を受けやすかった印象ですが、通常の融資ではそうはいきません。今後は審査は厳しくなることでしょう。
そのために、これからは業績を回復させ再び成長軌道に乗せて会社の利益を確保していかなければなりません。今回の緊急融資はその準備資金とお考えください。
では、「どのように業績を回復していくか」ですが、もちろん、一朝一夕ではできません。時間がかかります。ですので、少しでも早く「経営改善」、「経営革新」に取り組んでいく必要がございます。
会社が経常的に利益を出していくためには、同業他社との競争に勝たなくてはいけません。場合によっては同業だけではなく、異業種がライバルかも知れません。
他社がやっていないこと、考えていないことを早くから行うことによって差別化することが大切です。
そのためには自社の現状を分析し、課題抽出を行い、改善策を検討し、実行していくことが必要です。
国の補助金制度で「早期経営計画策定支援事業(ポストコロナ持続的発展計画事業)」というものがあります。
経営危機(リスケジュールなどの金融支援が必要な状態)に陥っていないものの、中小企業の経営改善意識を高め、早期から経営改善に取り組むための支援制度で、認定支援機関(当事務所)に対する計画策定費用などの一部を補助金で負担するものです。
顧問先様には早期経営改善計画作成料として費用負担をいただくことになりますが、
コロナ過における先行き不透明な中、金融機関との対話のための取っ掛かりとして最適な制度です。
早期経営改善計画を作成&提出すると1年後に計画の進捗について金融機関と話をすることになります。
今まで金融機関とあまり話をされてこなかった経営者の方にとっては良い機会です。
➊ ウィズコロナの間に中長期的な事業の資金繰りを検討し、新しく借りた融資の返済が始まると資金環境がどうかわるのか
➋ その時はいったいどのくらいの売り上げがなければ返済できないのか
❸ また、その売り上げを作るのには今までのビジネスをそのまま展開して売り上げを元に戻せば良いのか
❹ あるいは、新たな取り組みをして新たな収益源を獲得していかなければ返済ができないのか
そのような先を見通せる地図を描けるかという点からこの早期経営改善計画は有効です。
計画策定については全面的にご支援いたします。、会社、金融機関、税理士と3者で協力して事業継続させていく、コロナ後でもきちんとした事業を継続していくことを目指して
まずは早期経営改善計画を作成し、金融機関と対話しましょう!
定期的に資金供給をしてくれる地域金融機関の存在は中小企業にとっては非常に重要です。本業支援、事業性評価、事業承継、経営者保証の免除などによって、地域金融機関のスタンスも従来から変容しつつあります。
中小企業が上手にお付き合いするためには金融行政及びその地域金融機関のスタンスを理解することが必要です。
以下、金融機関の現状と今後の方向性について記載いたしました。
【金融機関の現況】
- 本業支援
金融機関の中には単に融資を行うだけでなく、地域社会を担っている地元中小企業と金融機関の関係性(リレーション)を深め、中小企業の課題解決に共に取り組んでいこう!
という動きが出てきています。
例えば①経営課題を明確化し、②今後の展開方法を検討、③補助金等を利用した開発・
設備投資資金の調達支援、④協業先・人材の紹介(マッチング)などを行うことにより、
最終的に売上拡大につなげていくことです。
こうして、地元企業に寄り添い、支援していくことで金融機関としては将来的に新たな
融資案件に繋がるという考え方です。
地元企業の発展無くして金融機関の存続はない!といったところでしょうか。
オーバーバンキングと言われる時代であり、都銀は中小企業の融資事業から撤退する
方向であり、また、地銀・信金等も将来的には地域(都道府県)に一つ又は2つしか生
き残らないとも言われています。
金融機関を取り巻く環境の変化に備え、金融機関ごとにさまざまな特色を出してきつ
つあります。
- 事業性評価
金融庁は「事業性評価」に基づく融資を行うことを重点施策として掲げています。
事業性評価とは過去の決算書の財務データや担保・保証に過度に依存した融資判断で
はなく、借り手企業の事業の内容と将来性を重視した融資判断を行うことです。
金融機関はこの金融庁の方針に従って事業性評価を行おうと取り組んでいます。
しかしながら、現実的には銀行員が借り手企業の事業の内容や将来性を評価することは
困難です。銀行員の専門分野外ですので当然です。ましてや日々の業務で忙しい銀行員
ですので、そこまで手が回らないというのが現状かもしれません。
ですので、金融機関の事業性評価の手助けとなるように、中小企業自らが能動的に自社の現状分析を行い、課題抽出を行い、事業計画を立てて金融機関に提出することが求められていると思われます。
まずは当事務所では決算書・申告書だけでなく、毎月の試算表を自主的に金融機関に提出していくことを推奨しています。事業計画もさることながら自社の業績をタイムリーに金融機関に開示をすることによっていざという時にサポートしてもらえる状態を作っておくことが大切だと考えております。
金融機関からすると、事業内容や自社の課題など、よくわからない企業よりもより積極的に情報提供してくれる企業のほうを支援しようと思うのは当然のことだと思います。
これからは、積極的に自社の情報を開示し、金融機関と対話をしながら様々な支援を受けていく時代です。
(3)経営者保証の免除
中小企業が金融機関から融資を受ける際、経営者の個人保証が求められるケースがほとんどでした。その状況を改善すべく、「経営者保証ガイドライン」が策定されています。
あくまで「ガイドライン」ですので金融機関はこれに必ずしも従わないといけないわけではない「努力目標」ですが、経営者保証の免除が結果的には中小企業の経営者マインドを向上させ積極経営に転じて活性化していくことが日本経済にも好影響がもたらされると考えられているようです。
個人保証を行っていると、仮に事業に失敗した時に、個人も破産に追い込まれ再起が難しいこと、そのために経営者が思い切った事業展開ができない、また、事業承継時に
後継者が個人保証をすることに難色を示し、円滑な事業承継が阻害されるなどの弊害が生じています。
令和元年度の民間の新規融資のうち、経営者保証の免除割合は21.4%となっています。意外と経営者保証のない融資が進んでいる印象です。
誰しも可能であれば経営者保証を外したいですよね。
ただし、経営者保証の免除を適用するには条件があり、すぐにできることと、時間がかかることがございます。
一例ですが、日本政策金融公庫の「経営者保証免除特例制度」では、以下の要件を満たす必要がございます。
➊会社と経営者の関係を明確に区分すること
・・・私的な支出と会社経費の混同をしないこと。
・・・会社から経営者への事業に関係のない貸付を行っていないこと。
➋財務基盤の強化
・・・借入返済が可能な収益力の確保
❸適時適切な財務情報等の提供
・・・年1回の決算書のみではなく、試算表、資金繰り表などの定期的な報告
※結局のところ、冒頭申し上げたように適用を受けるためにはまずはタイムリーな情報開示や常に経営改善を行っていくなどの対応が必要ということです。