収益認識に関する会計基準
2021/12/08
収益認識に関する会計基準
2021年4月以降に開始する事業年度から公認会計士の会計監査を受ける法人である会社法上の大会社(資本金5億円以上または負債200億円以上の法人)
と、上場会社については「収益認識に関する会計基準」が強制適用されます。
「収益認識に関する会計基準」では、原則として約束した財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得る対価の額で収益を認識します。
収益の認識方法は、次の(1)から(5)のステップを適用します。
(1)顧客との契約を識別する
(2)契約による履行義務を識別する
(3)取引価格を算定する
(4)契約による履行義務に取引価格を配分する
(5)履行義務を充足した時にまたは充足するにつれて収益を認識する
この説明だけではわからないと思いますが、要するに契約内容と履行義務等を踏まえて収益として計上する額や時期を判断します。
以下、ひとつ例を挙げて説明いたします。
例として≪返還不要の支払の帰属時期≫について説明しますと、会計上、返金不要の支払いを受ける場合の取り扱いについては、
今までは一般的な定めはありませんでした。
収益認識に関する会計基準では、返金不要の支払いを受ける場合、その支払いがすぐに約束した財又はサービスの移転を生じさせるものか、
または、将来の履行義務に対するものかを判断し、約束した財またはサービスの移転を生じさせるものでない場合は、将来の財またはサービス
を提供する時点で収益を認識することとされています。
そのため、法人税法においても収益認識に関する会計基準に関する法人税法基本通達が新設されています。
例えば【法人税法基本通達2-1-40の2】では、
「法人が、資産の販売等に係る取引を開始するに際して、相手方から中途解約のいかんにかかわらず、取引の開始当初から返金が不要な支払いを
受ける場合には、原則としてその取引の開始の日の属する事業年度の益金の額に算入する。
ただし、当該返金が不要な支払いが、契約の特定期間における役務提供ごとに、それと具体的な対応関係をもって発生する対価の前受けと
認められる場合において、その支払を当該役務の提供の対価として、継続して当該特定期間の経過に応じてその収益の額を益金の額に算入
しているときには、これを認める。」とあります。
なお、「返金が不要な支払」には、例えば次のようなものが該当します。
①工業所有権等の実施権の設定の対価として支払を受ける一時金
②ノウハウの設定契約に際して支払いを受ける一時金又は頭金
⓷技術役務の提供に係る契約に関連してその着手費用に充当する目的で相手方から収受する仕度金、着手金等のうち、後日精算して剰余金
があれば返還することとなっているもの以外
④スポーツクラブの会員契約に際して支払を受ける入会金
本通達でのただし書では、当該返金不要な支払いが、契約の特定期間における役務の提供ごとに、具体的な対応関係をもって発生する対価の前受け
として認められる場合に、その役務提供の対価として継続して当該特定期間の経過に応じてその収益の額を益金の額に算入しているときは、これを認
めることとされています。
なお、「契約の特定期間における役務提供の対価」に該当するためには、契約書等においていつからいつまでの間のどのような内容の役務提供の対価として
支払を受けているかを具体的に示す必要があります。(九訂版 法人税基本通達逐条解説 P250,251)