短期前払費用の特例
2021/11/17
短期前払費用の特例
前払費用の額で、その法人が支払日から1年以内に役務の提供を受けるものを支払った場合で、その支払った金額を継続して支払日の属する事業年度の損金に算入したときは、その支払った事業年度に全額を損金に算入することができます。(法人税法基本通達2-2-24)
原則的には、既に支出した費用の額で、その事業年度末においてまだ役務提供を受けていないものについては「前払費用」として費用の繰延べを行う必要があります。
企業会計原則では、「費用収益対応の原則」というものがあります。売上Aとそれに関係する仕入高Aは同じ会計期間に収益及び費用として計上しなければなりません。
今期仕入れたものを今期の費用に計上し、来期売れた時に売上として計上した場合、費用と収益が一会計期間内で対応しておらず、そのような財務諸表は会社の経営成績を適正に反映できておらず使い物になりません。
但し、その取引の重要性が乏しい場合には「費用収益対応の原則」の例外が認められています。
切手、印紙等の貯蔵品、文房具等の消耗品などについては、費用収益の対応を考えると、本来は実際に使用した時に費用化すべきですが、金額が僅少であり業績に与える影響も少ないことから購入した期に費用計上が認められています。
税務上においても、この重要性の原則により経理処理が認められており、以下の要件を満たすものは支出した期に全額費用計上が認められています。
これを【短期前払費用の特例】といいます。
【短期前払費用の特例】の要件は以下のとおりです。
① 等質・等量のサービスで時の経過によって費用化されるもの
(賃借料、保険料、リース料など)
② 役務提供の対価であること
(仕入代金の前渡しなどは対象外)
③ 支払った日から1年以内に役務提供を受けるもの
(複数年分を一括で支払う場合は対象外)
④ 当期中に支払っていること
(小切手、手形による支払はOKですが、未払金計上は不可)
⑤毎期継続して同様の処理を行うこと
(今期だけ前払いを行い、翌期以降は月払いに戻すことは不可)
【短期前払費用の特例】は節税対策として行われますが、節税効果は初年度の1度限りです。
また、1年分の前払を行った場合、早期のキャッシュアウトによって資金繰りに悪影響を与える可能性があります。
目先の節税ばかりにとらわれ過ぎずに十分検討したうえでの実行が望ましいです。