土地の相続税評価について
2021/10/17
土地の相続税評価について
相続税申告書を作成する際には各資産の相続税評価額を算定する必要があります。
相続税法では各資産は「相続開始時の時価」で評価することになっています。
「時価」の考え方は色々ありますが、
相続財産の評価方法は「財産評価基本通達」によってそれぞれ定められています。
預貯金であれば基本的に相続開始時の預金残高です。
建物は基本的に固定資産税評価額で評価します。
固定資産税評価額は固定資産税課税明細書に記載がありますし、市区町村で固定資産評価証明書を取得することによって簡単に確認することができます。
さらに賃貸建物であれば固定資産税評価額×(1-30%)で評価します。
しかし、土地の場合は目的に応じて以下のように異なる価格が存在します。
【実勢価格】
売買する当事者間で合意した「実際に取引される価格」のことです。
【公示価格】
土地取引の指標となる価格で、毎年1月1日時点の全国の標準地の1平方メートル当たりの価格です。
【固定資産税評価額】
1月1日の土地所有者に課される固定資産税、都市計画税、不動産取得税、登録免許税の算定の基準となる価格です。
固定資産税評価額はおよそ公示価格の70%になっています。
【相続税評価額】
相続税・贈与税の算定基礎となる価格で、毎年1月1日時点の価格が毎年7月に国税庁から発表されます。
評価額は相続税路線価に各種補正を行い、地積を乗じて計算します。
相続税路線価とは、各道路(路線)に面する1平方メートル当たりの価格です。
相続税路線価の価格はおよそ公示価格の80%になっています。
なお、市街化調整区域など路線価が付されていない地域もあり、その場合は評価倍率表を基に、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じる「倍率方式」によって評価します。
相続税評価額の算定には基本的には路線価方式によって計算します。
まずは評価対象地が路線価図のどこに位置しているか確認します。
位置の特定を誤ると適用すべき路線価が異なってしまいます。相続財産総額に占める土地価額の割合は大きいので、納付すべき相続税額に大きな影響を与えてしまいますので注意が必要です。
路線価図は住居表示が実施されている地域では住居表示で表記されており、未実施の地域では地番が表記されています。
住居表示と地番が異なる場合には登記情報サービスサイトの地番検索サービスなどで確認ができます。
また、住宅地図やgoogleマップなども活用して正しい位置を特定します。
場所が特定でしたら次はその土地の形状を確認します。
土地の形状は公図を取得して確認しますが、公図には種類があり、それぞれ精度が大きく異なります。
公図の分類が「地図(法第14条)」と記載されているものは不動産登記法第14条に基づいて備えつけられており公図の中でも正確な部類のものです。
一方で分類が「地図に準ずる図面」となっているものは精度が低いため、これだけでは正確な土地評価は難しいです。
その場合には別途「地積測量図」を取得して確認する必要があります。
ところが、地積測量図も先祖代々の土地で過去に分筆等のために測量を行っていなければ存在しない場合も多いです。
もし、地積測量図も無ければ現地調査で実測をします。
土地の形状確認が重要なのは、土地の価値は所在する場所だけではなく、形状等によっても大きく異なるからです。
奥行き、間口、面している路線数などに応じてそれぞれ、「奥行価格補正率」「間口狭小補正率」「側方路線影響加算率」「二方路線影響加算率」「不整形地補正率」などの補正率を乗じて計算します。
さらには、再建築時にはセットバックが必要な土地、都市計画道路予定地、地上権・地役権の対象となっている土地(上空に高圧電線が通っている、下に地下鉄が通っている土地)は
評価減の対象となりますので確認が必要です。
その他にも評価上留意する点はたくさんあります。
土地の相続税評価額の基本は路線価×地積ですが、各種補正項目が適用できれば評価額を下げることができるものばかりです。
土地の相続税評価は知識の有無、資料の揃え方によって評価額が異なることが多いですので注意が必要です。